『うつ病九段』を読んでみた

今回は先崎学『うつ病九段 プロ棋士が将棋の失くした一年間』を読んだ感想です。
この本は棋士の先崎学さんが、自身のうつ病についての病状の変化やその時の感情や考えについて、約一年間の経過が綴られた本です。
うつ病と診断を受けるまで
先崎さんが47歳の時に、疲れが取れない、気分が暗い、寝起きが苦しい、早く目が覚めるしね入も悪い、全てにおいて現実感がないという状態になります。
そのまま様子をみていくのですが、対局中全く集中できない、決断力が鈍る。思考が全然まとまらず頭の中がふわふわしている。朝の気分はへこんでいく一方で、得体の知れない不安が襲う。
更に様子を見続けるが、対局中座っているのが精一杯になり、医師のお兄さんからすぐに病院に行けと言われ、ここでうつ病と診断を受けます。
入院時の体調について
睡眠薬を飲み始め、自宅療養となるが、不安で家の中を歩き回ったり、死のイメージが駆け巡るようになり入院する事になります。
入院してはじめの頃は、ただただ横になり、食べ、薬を飲み、眠る毎日。そこから徐々に活字が少し読めるようになり、外出するようにはなりますが、顔全体の表情は無く能面のようになり決して笑う事はなかったそうです。
この頃からお兄さんに外出のついでに出来るだけ散歩をするように指示されています。1日3時間ぐらい歩いても、夜は3時間おきに目が覚める状態。次第に、朝体全体がだるくて一番つらく、夜にかけて調子が良くなるようになってきて、病院の廊下を歩いたり、シャドウボクシングをしたり、足に1キロのウエイトを付けて歩くようになってきたそうです。
入院して1ヶ月近くなってきて、ベッドで寝ている時間が少なくなり、突然テレビの中の色が目に飛び込んできたそうです。私も景色が急に綺麗に見えた日をよくおぼえています。今まで自然に目を向けるという気力も無かったんだとその時に気づきました。
入院してから約2ヶ月で退院となり、その間に16キロも体重が減った。まだ頭の中にどこまでも続く深い霧が覆っている感じでとにかく頭がぼーっとしたと記録しています。
退院後の生活の様子
退院にあたって、生活リズムを作って、朝食は必ず食べる。日中は出来るだけ家にいないと決め、お兄さんからは退院後1ヶ月はとにかく散歩。2ヶ月目に入ったぐらいに退屈を覚えるようになると説明を受けたそうです。
退院後の様子も記録されていますが、その後の内容は読んでいただければと思います。
印象に残った部分
『医師や薬は助けてくれるだけなんだ。自分自身がうつを治すんだ。風の音や花の香り、色、そういった大自然こそ、うつを治す力で、足で一歩一歩それらのエネルギーを取り込むんだ』という文章です。
そして、最後にはこのような言葉がありました。
『うつ病は必ず治る病気なんだ。必ず治る。人間は不思議なことに誰でもうつ病になるけれど、それを治す自然治癒力を誰でも持っている。だから、絶対に自殺だけはいけない。死んでしまったら、すべて終わりなんだ。』
うつ病を寛解したからこそ言える言葉ではないかと思いました。